夜仁志が帰って来ると、必ず先にお風呂に入ってから、夕飯になる。

最初に夏実の体の具合を聞き、そして必ず、その日何か思い出したことはないか聞いた。

夏実の報告を聞くと必ず失望した顔をする。

あれ以来、思い出したことは一度も無かった。

車の運転は覚えているのに、何故自分の記憶が思い出せないのだろう。

自分でも思い出せないことに嫌気がさした。

もう仁志の失望する顔は見たくない。

仁志は毎晩、サザンをかける。

「愛しのエリー」が流れた。

夏実は何故かこの曲を聞くと泣きたくなった。