仁志がコーヒーを淹れてくれた。 「ありがとう」 飲んで、少し違和感を覚えた。 「病院で飲むより美味しいだろ」 「―そうね…」 仁志が淹れてくれたコーヒーはブラックだった。 ―私はブラックは好まない。 その事に気付いた。 ―彼は知らないのだろうか。それとも、忘れているだけ? 「さ、今日は退院祝いだ。奮発したんだ」 高そうなワインを見せた。 「自分が飲みたいだけじゃないの?」