そうして、仁志は絶対に夏実を自分のものにすることが出来なかった。

夏実と裕太をいつまでも見守ることが自分の運命なのだ。

―記憶が戻っても、夏実は裕、お前を選んだよ。

仁志は夏実との生活を思い出していた。

自分を婚約者だと嬉しそうに言っていた夏実の顔が蘇る。

知らないうちに涙で視界がぼやけていた。

夏実と一緒にいた時間を過ごせただけでも幸せだったじゃないか。

きっと、夏実は裕太を救うだろう。

―今度こそ、サヨナラだ。夏実…