―夏実が出て行った。

俺の側にいる資格はないからと言って。



全てを思い出した夏実は青白い顔をしていて、悲しみを越えた、絶望に満ちた瞳をしていた。

そして

「私は悪魔だった。ここにいる資格なんかないわ」

と呟いた。

俺は何度も抱き締めたい衝動に駈られたが、彼女はそのことをもう求めていなかった。

そして、静かに低い声で裕太の居場所を訪ねた。

「お前が入院していた病院にいるよ」

すると夏実は大きく動揺した。

「―生きているの?」

「裕の救出が早くて、命はとりとめた」