夏実はコンクリートに体全身を強く討ち、体に激痛が走った。

その瞬間、海に鈍い音がした。

無数の水しぶきが上がる。

裕太の車が、黒い海にゆっくり飲まれてゆく。

まるで黒い闇の地獄に墜ちてしまう様に。

夏実は目を凝らしてただその様子を眺めていた。

『―お前は生きろ』

その時の裕太は優しい眼をしていた。

―どうして、最期にあんなこと言うの?

息が苦しい。

―どうして全く抵抗しなかったの?

最期まで悪魔のままでいて欲しかった。

体が震える。