夏実の体が強ばった。 ―この顔はヤバい。 そう思った瞬間、頬に激痛が走った。 口の中が切れた。 『どうして笑っているんだ』 裕太の目は淀んでいた。 『どうしてって…笑ってはいけないの…?』 『俺の前では笑わないのに、どうして俺以外の人間に笑うんだ?!』 『きゃあ!!』 裕太は電話機を投げつけた。 『―あいつと電話していたな』 夏実は恐ろしくなり、体が震えて動くことが出来なかった。