『夏実』

心地好い、響き。

『幸せだよな?』

胸が痛い。

夏実は仁志が抱き締めてくれた感触を思い出していた。

『幸せよ』

しばらく二人はお互いの息づかいを感じていた。

『―そうだよな』

夏実は涙を拭い、嗚咽が聞こえないか心配だった。

『―じゃあ、元気で』

『仁志!』

切ろうとされて、つい呼んでしまった。

『―お前、でけーよ、声。耳痛え』

どうしよう、言いたいこと、たくさんあるのに。

何を言えばいいの?