「―夏実?」

夏実は仁志のソファーに潜り込んだ。

ほとんど仁志の上に覆い被さる様になってしまう。

「―どうしたんだ。急に」

仁志は夏実の体が震えていることに気付いた。

「―具合、悪いのか?」

夏実は首を振った。

「顔、真っ青だぞ」

「お願い、今夜だけこうさせて。―凄く、恐いの」

「じゃあ、ベッドに移ろう。ここじゃ狭いから」

夏実は頷いた。

夏実は肝心な人を忘れていた。

本当の婚約者を。