後朝(きぬぎぬ)の朝がやって来た。
帝は、かつて、こんなに朝が早くやってきた事があっただろうか、と思う。
そして、こんなに朝の別れが辛い事があっただろうか、とも思う。
ずっと、この人と一緒に居たい。
政務や人の噂など気にせずに、昼も夜も、ずっとこの人と一緒に居たい、と思う。
腕の中のこの人は、どう思っているのだろう。
帝は、初めて彼女の顔を見たときの事を思い出していた。
菫(すみれ)の襲(かさね)の十二単を一目見た瞬間、帝は運命の人に出会ったと思った。
いつの日か琴を爪弾いていたかの人は、今、自分の目の前で平伏している。
緊張の為だろう。
小刻みに震えている様子までが可愛らしく思えた。
早く顔を見たくて堪らないのに、声をかけても一向に動く気配がない。
だから、あんな風に彼女の顔を、覗き込んでしまったのだ。

