「姫様!しっかりなさいまし」
気分が悪い…。瞳を閉じているのに、目眩がして何度も喉元を嚥下(えんか)させた。
「お水を持って参りました、姫様」
礼を言って、何とか水に口をつける。
「大丈夫でいらっしゃいますか、お気をしっかり」
「取り乱して御免なさい。こんな風では駄目ね」
「この度、今上の御目にお留まり申し上げました事、心からお喜び申し上げます」
父上が亡くなって以来、女房達はいつも不安そうだったのに、今は皆心なしか表情が明るい。
そう、彼女達の為にも、私は行かなくてはならない。
せめて、こうなってしまう前に、お文を下さった公達の姿を遠目でもいいから見てみたかった。
さようなら、私の初恋。

