「恋すてふ わが名は… (私が貴女に恋をしているという噂は、早くも世間に広まってしまった) 今宵、清涼殿にて待つ」 壬生忠見の有名な和歌である。 これを読んだ時、私は血がさあっと音を立てて凍りつくような気がした。 今日あんなに睨まれて、悪口を言われた理由はここにあるのに違いない。 ああ、なんという事。 清涼殿へ。 それは即ち、夜伽を意味した。 私は、ふっと意識が遠のいて倒れそうになる所を、女房達に抱きとめられた。