桐壷~源氏物語~



その日は、同僚達の様子がおかしかった。

いつも余所余所しい人達だったが、今日は殺気すら立たせて、私をじっと睨んでくるのだった。

私は堪えられなくなって身体がかたかたと震えるのを、必死に隠した。
そして、平静を装いながら、ひたすら時間が過ぎるのを待っていた。



「一体何処で御心を掴んだのかしら」


「大人しいと思っていたのに、裏で何をしているのか分からないわね」


「新参者のくせに」


ひそひそと、しかし私の耳に届く様に、同僚達が陰口をたたく。

何故私が、こんなに睨まれなければならないのかは分からない。

しかし、皆が一丸となって私に敵対心を持っている事だけは、分かった。