桐壷~源氏物語~



御所内では冷たい同僚達に囲まれて、辛い思いをしているが、この人からの文を見る時は、温かな気持ち包まれているのが自分でも分かる。

いつかお会いしてみたい。

そう思った自分に驚いて思わず口元に手をやった。

顔を合わせる。

この時代では即ちそれは、結婚を意味するのだ。

嫌だ、私ったら、一体何を考えているのかしら。

胸が急にどきどきと脈打つので、私は驚いて胸元を両手で押さえた。

何故こんなにも胸がどきどきと脈打つの。何故、こんなにも頬が熱いの。何故…。


私は鏡を取り出して、そっと覗きこんでみる。

そこには、頬を紅潮させた自分が居た。

黒塗りの化粧箱を取り出し、紅を小指に取る。

そして、口元へと運んでいくと、唇に紅をつけた。

上下の唇を合わせて、ぱっと唇を開く、



これが、恋なのかしら…。