「最近、毎日の様にお文が届きますね。姫様。今日は、立派な藤です」
「まあ…いい香り」
私は、思わず顔を綻ばせた。
「最近、思うのよ。皆、香を焚きしめたりするけれども、どんなに高級な香でも、生きているお花の香りには敵わない、と」
そう言って、胸をときめかせながら、結んである文を広げて見た。
美しい文字で、いつも貴女の事を考えている、一目で良いから、貴女の御顔を身近に見てみたい。
そうすればきっと仕事ももっとはかどるのに、貴女のせいです、と最後の方は愚痴っぽいことまで書いてあるので、私は自然と笑みを浮かべた。
こうやっていつもお文を下さる公達(きんだち)、貴方は一体何処の御方でいらっしゃるのですか。

