桐壷~源氏物語~



そんな弘徽殿女御(こきでんのにょうご)に、帝も嫌気がさしてしまうのだが、共に過ごした年月が長い為、彼女を捨て置く事も出来ないのであった。


そして、思う。

こんな時、桐壺更衣が傍に居てくれたら、と。

帝であるが為に、未だに自分の名を明かせずにいる。

彼女は、自分の文をどんな想いで読んでいるのだろうか。

あの時はお忍びで桐壺へ行くことが出来たが、身分故に、一人で桐壺まで行くのはなかなか難しい。

なので、信頼のおける臣下の者に、花と文を託しているのだが…。


彼女は文を読む時、どんな表情をするのだろうか。

驚きで瞳を見開いて?

それとも恥ずかしげに頬を染めて?

それとも、嬉しげに唇を綻ばせて?



ああ、今ひとたび、彼女の姿を見てみたい。