しかし、いつの時代にも必ず毛色の変わった羊、いや異端児が存在するものだ。

この場合、大月女創神・朧朏に仕えている緋月宮の女官、陶嘉がそれだった。

その異端児の彼女が今、再び果実酒に満たされた玻璃(はり)の壺を両腕に抱え緋月宮の廊下を渡っている。

李を醸した極上の果実酒は、透明な玻璃を通して美しい琥珀色の光を淡く反射している。

ほのかに甘酸っぱい香りが陶嘉の嗅覚をくすぐった。

この酒はどうやら、朧朏(ろうひ)様のお気に入りの様だわ。