「陶嘉(とうか)」


どうやら、仕事中にもかかわらず、ぼうっとしていたらしい。

驚いて視線を上げると目の前には蒼白い月の光に照らされた、幻想的な庭園が映し出された。

すぐに、膝を崩して座っている隣の主の方へと向き直る。すると案の定、その人物が首をしゃくる。

酒を注げ、と促しているのだ。



「まだお飲みになるのですか?」



ほぼ空になった玻璃の壷の底を見つめながら、彼女が驚てそう呟くと、主人がじっと見つめてくる。

決して、睨んでいるのではない。

ないのではあるが、いいから注げ、早く注げ、とその瞳が言い表し様の無い圧力をかけてくるのだ。