最初は大変だった。
なんで私がこんなことしなくちゃいけないの?って思ったこともあった。

でも、慣れるとこれが日常だから特に違和感なく毎日こなしている。

それに、ちょっと優越感に浸れる。

友達からはよく「羨ましい」って言われる。
何気に椿はモテるから、狙ってる女の子は多い。

でも、カノジョはいない。

なんでかって言うと、皆口を揃えてこう言う。

『椿くんを起こせないとカノジョにはなれない』って。

まったくその通り。

小学生の時、一回だけ、椿を起こして学校に連れて行く仕事を変わってあげたことがあった。

私は椿の家に寄らないでそのまま学校へ行った。

ちょっとしたら来るだろうと思っていた。
でも椿と椿を迎えに行った子がなかなか学校に来ないから、心配になって椿の家に戻ってみると案の定、椿はまだベッドの中で夢の中。
椿を起こしに来た子は半泣き状態で、桜さんと榊さんに慰められていた。

「毎朝ごめんね、本当に…。夜にちゃんと言い聞かせてるんだけど…。」

「いいんですよ~。私の仕事ですから。」

「ありがとう、毎日助かるよ。」

「……おはよう。」

「お、やっと起きてきた!椿くん、早くご飯食べて!遅刻しちゃうから!」

「ん、」

のたのたとテーブルにつくと、もそもそとご飯を食べ始めた。
私はこの間に椿の鞄の中を確認して、忘れ物がないかを調べる。