椿の部屋は二階の一番奥の部屋だ。
さっきは起きてたからもう準備が終わっててもおかしくないのに。

「つばきー?」

コンコンッ、とドアを一応ノックしてみる。

返事があれば起きてるだろうけど、なかったら二度寝しているんだと思う。
どこをどうしたらそんなにマイペースになれるのかしら?
ちゃんと時計を見て行動させないと、いつまでたっても一人で起きれない。

「椿!起きて!学校、始めるわよ?!」

「ん…んん……も、ちょっと…、」

「だーめーーー!!はい、起きる!あと十秒で起きないと置いていくからっ!」

ベッドの上で丸まって寝ている椿の身体を揺する。
眠たそうな声を出して、反対側に寝返りを打つ。
一度寝た椿を起こすのは至難の技なのだ。

「十、九……、」

「………、」

「六、五………、」

「……ん、」

「二、一…!」

「んんー……ん、あれ…、おはよう、ゆきの。」

「おはよう、さ、早く着替えて!遅刻するから!」

「ん。せいふく…、」

「はい!鞄ちゃんと持って下に降りてきてね!」

「うん。」

椿に制服を渡して、着替えるように促す。
そして忘れずに鞄を持ってくるように言うと、椿は素直に頷いた。

私は先に下に降りて、桜さんに椿が起きたことを報告する。

お兄さんの桜さんだって椿を起こせない。
だから毎朝、私がお邪魔して椿を起こしているの。