「おはようございまーす!!」
「あ、おはよう、幸乃ちゃん。」
「おはようござます、桜さん!椿の準備終わってますか?」
「あぁ~…ごめんね、まだ、なんだ…。」
志岐 桜(しき さくら)さんは椿より六歳年上の大学二年生。
椿と同じ、少し濃い茶色の髪の毛で優しい顔立ちをしている。
実際、性格もとても優しくて、お兄ちゃんがいたらこんな感じなぁって思った。
「お、幸乃ちゃんじゃん♪おはよ。」
「おはようございます!榊さん!」
高校の制服に身を包んで、リビングのドアの陰から顔を出したのは次男の榊さん。
健康的に焼けた肌、桜さんと同じ濃い茶色の髪の毛。
頼れる兄貴肌タイプで、私も小さい頃よく遊んでもらった記憶がある。
「毎日毎日…椿が悪いな。」
くしゃくしゃと私の頭を撫でる。
ふわりと香ってきた香水と、ボタンを留めていないところから覗く胸板にドキドキする。
目のやり場に困って少し逸らすと、ちょうど鎖骨の辺りに金色に光るネックレスが目に入った。
あれって確か……。
「玲香ってもう行ったか?」
「あ、はい。大分前に…、」
「そっか、サンキュ。兄貴!オレもう行くわ!」
「うん!気をつけてね、はい、お弁当!」
「おう、じゃ、」
自転車に跨ると凄まじいスピードで走って行ってしまった。
