でも結局…


「取れなかった…」


授業時間目一杯まで粘ったのに

もうこれはアレ?

神様がアタシの願い事なんか叶えてやらないよーって言ってるのかな…


「むぅー…」

「クスッ、幸乃」

「何よー」


笑いながら椿が近づいてくる

そして桜の花びらを差し出す


「はい。あげる」

「え…?」

「俺、願い事ないから。幸乃にあげる」

「ダメ!だって自分で取らなきゃご利益なさそうじゃない!」

「……そっか、じゃぁ、」


そう言って椿は一枚の花びらに唇を押し当てて

小さく呟く

言葉は聞き取れなかったけど、

とってもキレイだった


「俺の願い事は『幸乃の願いが叶いますように』だから、これ持ってると叶うよ」

「椿…」

「ね?これ、幸乃が持っててよ」

「…ありがと、」


優しい椿に胸がきゅんってなった

何よ、椿のばかぁ

不覚にも感動しちゃったじゃない!


「あ、彬が呼んでる。行こう、幸乃」


自然に差し出された左手

いつの間にかアタシより大きくなった手

その手を取って、歩き出す


「お願い事、叶うといいね」

「うん!!」


ありがとう、椿