「……」

 アリシアは、ベリルの横顔をじっと見つめた。

 整った顔立ちに、よく通る声……まだ子供なんだけど、私は彼に見つめられると心臓が高鳴る。

「先生……」
「何?」

「泡、消えましたけど」
「え? あああ!? しまったぁ~」

 ケーキは泡が大事、それが無くては上手く膨らまない。アリシアは生地を呆然と見つめた。

「今からまたやっても……」
「もう小麦粉を入れた後です」

 アリシアは泣きそうな顔をベリルに向ける。ベリルは我慢しきれず、

「ク、ククク……」

 アリシアに背中を向けて、笑いをこらえた。

「! ベリル!」

 アリシアは恥ずかしさで顔が赤くなる。まだ笑いの収らないベリルは、肩を震わせながら口を開いた。

「では、ケーキは止めましょう」
「え?」