エメラルドの傷

 丁寧に教えてくれるベリル。アリシアはそれに少し唖然とした。

「……」

 私はレシピ本を見て、彼の声を聞きながらやっているのだけど……彼は本も見ずに、本の通りの分量をきっちり計っていた。

 こんなものまで記憶してるんだ……改めて、彼の凄さを認識した。

「先生?」

 ぼうっとしているアリシアに、ベリルは声をかけた。

「! あ、ごめんなさい」

 15歳だけど、もう私の身長を超えている。いつも私が見下ろしていたのに、いつの間にか私が見下ろされてるのね。

 そうだ……彼は天才なのに、人を見下すという事が無い。

 私なんてピアノ以外、これといった事は出来ない、知らない。