「視察?」

 白衣を着た老齢の男性が、歩きながら報告を確認する。

「今日だったかね?」

 A国、遺伝子研究所。国家機密クラスの施設だ。英語圏の資本主義国家で、森林地帯が4割を占める。

この研究施設が“キメラ”を誕生させてから、何度目かの視察が訪れていた。

 老齢の男性は、視察に来る人間を入り口まで出迎える。

「!」

 今回の視察は、随分とまあ……白衣の男は少し呆れたように、そわそわとしている青年を見やった。

 ビシッとしたスーツを着こなしているが。今までの人間に比べれば、いささか頼りないな。

 溜息混じりに、そのスーツの男を眺めた。どう見積もっても30前後。

こんな人間を、視察に送り込んでくるとは……本国もいよいよもって、この施設を捨てる気でいるのか?