ただ君の側にいたかった…

奈々が退院したのは、俺が大学4年の7月の終わりの事だった。

兄貴の死から1年が経とうとしていた。
少しずつではあるが、奈々は兄貴の死を受け入れ始めていたんだ。
兄貴の事を思い出す度に泣き崩れる奈々を、俺は何度となく抱き抱えた。
一刻も早く、昔の奈々に戻れる様に願っていた。


でもそれと同時に、ある思いが俺の頭の中を支配していたんだ。
俺が奈々の近くにいたら、奈々はずっと辛い思いをするんじゃないかって…

そう思った俺は、就職先を東京に決めたんだ。
奈々の前から消える為に。そして、自分自身にケジメをつける為にも。


俺が卒業するまで、今まで通り時間を見つけて奈々に会いに行った。

奈々の両親には3月に上京する事を伝えたが、奈々にはなかなか言い出せなかった。
別に奈々にとって、俺はいなくても大して変わらないんだろうけどな。