離任式が始まり、卒業生は体育館の上の方で見学することになった。


今年転勤する先生は、生徒に人気のある先生ばっかで、多くの卒業生も姿を現していた。


「あっ、宮野先生だ」


美波が小さく声を出した。


ステージに注目すると、宮野先生がステージ中央にあるマイクに向かって話し始めるところだった。


「先生ってば、うちらが卒業したときと同じ言葉言ってる」


「そうだね」


宮野先生の言葉は、いつも私たちに言ってる言葉だった。


礼儀、感謝の気持ちを忘れずに。


人は、一人で生きてるんじゃない。


当たり前のことだけど、忘れがちなこと。


他の先生は結構話してたのに、宮野先生の話は2分くらいで終わった。


「相変わらず、短い」


美波が隣で、くすくす笑った。


「いいじゃん。私は好きだよ。短い話」