「異国ではの。『帝王学』なる学問があるらしい。」
「ほう・・・それはどのような学問なのですか?」
「うむ。ワシもサワリしか知らぬのだが・・・つまりは、多数の犠牲を出すくらいなら、わざと犠牲になる人間を定め、これを犠牲にする覚悟でことにあたる。それで成功すればそれでよしとする学問らしいのじゃ。数千人を生かすために数百人の命なら犠牲にする覚悟であたる。これが誠の王道というものらしい。」
「なるほど」
「ワシはその考え方に、この幕藩体制の生き残り方を見たような気がするのじゃ。」
「ほう。なるほど。私にも少しわかる気がしてきました。」
次郎もそれにうなずく。
「さすがじゃの。ワシが見込んだ男だけある。そこでな、ワシはこのたびの開墾で、もうひとつ合わせて狙っておることがあるのじゃ。」
「農地を開き、石高を上げる。それ以外にも目的があるとおっしゃるのですか?」
「うむ。」
諏訪はしばし、虚空を見つめた後、
「それはの・・・」
と口を開きかけた。