再婚であったにもかかわらず、その婚儀には、藩の一番の権力者である家老諏訪の姿もあった。きらびやかな衣装に、豪華な料理、さらに周囲の農民までも福田屋から祝儀をもらい、誰もが紗江の幸せを願ったのである。

しかし、当の紗枝の方は悲惨なものであった。
紗枝を一目みて、気にいった諏訪は、その婚儀の夜、忍びで福田屋を再訪し、何やら話したあと、次郎は諏訪とともに紗枝の体を陵辱したのである。

「ときどき、この女を福田屋の使いのものとして、城に来させてくれぬか?」
帯を結びながら諏訪が言う。
「・・・このような後家のハシタメを御気に召されたのでしたら、いかようにも・・・」
次郎はさらりとそれに答える。
「うむ。これほど美しく淫らなおなごは江戸にもおらぬ。気に入ったぞ。」
「そうでございますか。それであれば、殿の身の回りをお世話させるために城に留め置かれてもよろしいのですが・・・」
次郎に紗枝に対する愛情などないのだ。