その帰り道、紗枝の目に城下を流れる清流が目に入った。
「お父様、私ここでしばらく一人になりとうございます。」
「どうしたのだ?」
父が聞き返す。
「やはり・・・福田の屋敷で何かあったのですね?」
母が心配そうに紗枝を見る。
「いえ・・・なにもありません。母上。ただ、あまりに早すぎる再縁ゆえ、少し驚いておりまする。少々、頭を冷やして、冷静にこれからの人生を考えたいのです。」
「そうですねえ。まだ1年にもならないですからねえ・・・それに・・・」
といいかけて母は言葉を切った。
「・・・とにかく、紗枝がそうしたいなら、そうなさい。ただし、できるだけ早く帰るのですよ?」
「はい、わかりました。」
紗枝はそういうと、河原へと降りていった。

「大丈夫なのか?」
娘の後ろ姿を心配そうに見ながら父が母に聞く。
「大丈夫ですよ。あれはああ見えて芯の強い娘ですから。」
そういいながらも母は何度も娘を振り返りながら家路につくのであった。