これによって、この話は終わることとする。
この後、この常篤の墓をお忍びで訪れた真田幸民公は、墓の前で泣き崩れ、
「私はこれからこの国の中心をなすべき忠臣を失ってしまった。私の判断がもう半日早ければ・・・」
と自らを悔いたという。
そして、その場で筆をとって、こう記した。
『信以国宝成其以国永』

幸民公の気持ちはこうであったのだろう。
『信じ支えあうことによって国を作り上げようとする想いこそが国の宝となるのだ。そして、その想いを持って国を成せば、それは永遠に続くすばらしい国家となる』と。
まさに信玄公が、そして常篤が思い描いた理想像そのものではないか。

この後、真田幸民は江戸に帰ることなく、政務に忙殺されることになる。そして、松代藩は奇跡的な復興を遂げ、明治維新においても一角の活躍をすることになるのである。