その日も春日神社で百度参りをしていた紗枝であったが、この時、紗枝は城の方角に流れ星を見た。
(もしや・・・常篤様が・・・)
紗枝に確信は無かったが、その女としての勘が、常篤がいま死んだことを予感させた。
その場に紗枝は愕然と崩れ、座り込んだ。
「常篤様・・・」
紗枝の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。

(もう涙などとうに枯れ果てたと思っていたのに。)
紗枝の頬を幾筋もの涙がつたう。
紗枝はいまだにはっきりと覚えていた。
はじめて紗枝が出会った河原で、紗枝の裸を見て照れたように背を向けた常篤。それからの常篤の河原で見つめていた日々の姿、そしてあの最後の夜の姿。