さて。
常篤が幽閉されてからというもの、紗枝は毎日のように春日神社に出向いて、一心にお百度を踏んでいた。
「どうか、常篤様がお殿様にお許しいただけますように・・・」
あの事件以来、紗江は周囲の目もまったく気にすることなく、ただ祈りを捧げ続けた。すでに、福田屋からは縁を切られていたも同然であった。今の福田屋はすでに今回の諏訪との一件で、蜂の巣をつついたような騒ぎになっていて、紗江のこと云々という状況でなくなっていたのである。

雨の日も風の日も、紗江は通い続けた。
(常篤様のような方がこれからの松代には必要なのです。)
常篤に出会えたことへの感謝と、常篤へのかわらぬ熱い思いに突き動かされて、紗江は一身不乱にお百度を踏み続けた。
すでにぞうりは履きつぶされ、足の裏はちまめが破れ、彼女の通る参道には血の筋がはっきりとわかるほどに染み付いていた