紗枝の生家は、武家出身でありながら、両親が決して無骨ではなく、比較的温厚で、人望も厚かったことも手伝って、村に戻ったその年の春早々、縁談が二件も舞い込んだ。
(出戻り・・・)
という周囲の軽蔑に似た視線もあったのは確かだが、彼女の器量のよさは、抜きに出ていることは確かで、帰郷したことは、必然的に再縁の相手を求めている、と話に尾ひれがついて隣村まで伝わるのは仕方のないことだったのである。