「おおっ!」

侍従たちは頼重の首が間違いなく飛んだと錯覚したその刹那、諏訪の前に1人の侍の姿があった。
その手に握られた刀は、常篤が放った美しい刀の軌道が頼重の首に当たる直前にそれを受け止め、いなしたのである。

(・・・この者・・・できる!)
常篤は相手の剣気を持って、その強大さを認識した。
「さすがは白桜の使い手。見事なり!」
そういうとその男は常篤の足に蹴りを飛ばし足を払おうとした。
常篤がひらりと下がり、それをかわす。
「男!名を聞こう!」
「それがし、今は訳あって諏訪様の元で食客の身の・・・石州と申す。武田常篤殿。お主が諏訪様のお命を狙う賊ならば、斬るまで。なぜ諏訪様のお命を狙う?」
「石州殿・・・この場にて議論は無用であろう。武田常篤、推して参る!」
二人の刀が2合、3合と打ち合い、火花が散る。
二人の剣気におされて、侍従たちは手も出せずに勝負の行方をただ見つめていた。