「……あたしが読んだ小説に出てきた、幼なじみに恋する主人公たちは、みんなちゃんと幼なじみとハッピーエンドになっていたのにな」



「小説と現実は違うから」



「それは分かってますけど」



「辛いことをひとつずつ乗り越えて、人は成長していくんだよ」



その辛いことも、いつか大切な思い出に変わるって、マスターも言ってたっけ。


星空から、カイト先輩の顔に視線を移したら。

先輩が、切ないほどに優しく微笑んでくれたから。



「やばい。本当に泣きそうです……」



「そのために、こうして胸を貸してるんだろ」



泣きたいだけ泣けよ、というカイト先輩のささやきに。



あたしの涙腺は……

せきを切ったかのように、大粒の涙をあふれさせた。