あたし、速水星来(ハヤミ・セイラ)、大学3年生。


バイト先の先輩に無理やり連れて来られたこの合コンで、たまたま隣に座ったこの広瀬さんは、あたしの1歳年上、K大学の4年生だそうなんだけど。

飲み会から2人で抜け出さないかと耳打ちしてきたこの人に、今日は人数合わせで連れて来られただけで、あたしには遠距離恋愛中の恋人がいるのだと告げたところ……

この人は、こうして突然、ブルームーンになりたいなどと意味の分からないことを言い出したのだった。



「ブルームーンは知っていますけど、あたしのブルームーンになりたいっていうことの意味が分かりません」



「だからぁ」



広瀬さんはタバコの火を灰皿にギュっと押し付けて消すと、体ごとあたしの方に向けてきた。



「満月は、必ずしもひと月につき1度じゃないってこと。

恋人も、必ずしも1人の女につき1人の男じゃなくていいんじゃない?

2度目の満月はブルームーン。

俺が君のブルームーンになりたいってのは……

つまり、君の2人目のカレシになりたいってことなんだけど」