「――それで、初めて手を繋いだのは、夏祭りの夜。

初キスは、夏の終わりに思い出の展望台で、か。

まったく、どこまでもセーラの乙女チック思考に付き合って、ロマンチックに演出してくれるのね、先輩は」



9月、新学期。

うるさいくらいのセミの声と、夏の名残の暑さ。

放課後の教室で、あたしの夏休みの出来事を聞いたカヨが、ヤレヤレと笑った。



「あたしなんて相変わらず勉強漬けの毎日だったのに、セーラはいいことずくめで羨ましいわよ、まったく」



「いいことだけではなかったよ」



「何かあった?」



「んー……」