少女は黙って首を振るばかりだった。

「あんまりワガママ言うんじゃねえぞ」

オカジマがバイクに股がり、キックに足をかけた時だ。

「ぐううぅぅうぅ」

バイクのエンジンと間違えるかと思うほどの大きな音が静かな駐車場に響き渡った。

「あ」

少女が表情をかえないままお腹を押さえた。

「なんだお前、腹減ってんの?」

「うん。昨日の朝から食べてない」

「ばか野郎。何やってんだよ。
金持ってねえのか」

「うん」

少女は頷いて、また澄んだ瞳でオカジマを見上げた。

「しょうがねえやつだなあ。
今日だけだからな」

そう言うとオカジマはバイクの鍵を抜き、「行くぞ」と家の玄関をあごで差して、歩き出した。

>>>