迷惑ばかりかけられて、そして突然死んでしまった父親の名前で呼ばれる事が、レンには苦痛なのかもしれない。


気付けば、あたしはそっとレンを抱きしめていた。


しばらくお互いに口を開く事もなく、ただ虫の鳴き声だけが辺り一面に広がっていた。


初めて聞いたレンの家族の話は、あたしには衝撃的で驚いてしまうばかりだった。


ただほんの少しだけ、レンの内に秘めた思いを知れた気がして、不謹慎にもあたしは嬉しかった。