瞳に映るエメラルド

バルコニーの下を覗く。
すると、そこにいたのはベリル。

「なんでそんなトコにいんのよ!?」

 驚いてミカは声を張り上げた。

「それもこっちのセリフ」

 慌ててミカは下に降りていく。旅館の入り口は反対側にあるため、ここまで来るのは一苦労だ。

 周りを見回して、こっそりとベリルの側まで行く。

「なんでこんな処に?」
「追われてるから隠れてる」

 声をひそめて会話する。

「そういえば……破壊しなかったの?」

「ん? ああ。日本では少々やりづらくてね」

 ああ、やっぱり考慮してくれてたのね。

 それにしても……ベリルの様子が変な気がする。妙に元気が無い。

「どうしたの?」

 心配する私に、彼は笑顔で応えた。

「心配ない。少々、血を抜かれすぎてフラフラしてるだけだ」

「だ、大丈夫なの?」

 ベリルは腹立ち紛れに、

「人が死なないと思って、遠慮無く採りおって」

 呆れたように頭を抱えて溜息を漏らした。