瞳に映るエメラルド

 ひとしきり土産物屋を見回ったあと、ミカたちは旅館に戻り再び温泉に浸かった。


その後は、運ばれてくる料理に舌鼓(したつづみ)。

 外はすっかり暗くなって、そこから女たちの本番。恋愛話が盛り上がる。誰が格好いい。とか、誰には彼女が出来た。とか、あのコに彼氏が出来た。

などなど、話は尽きない。


深夜──

 ミカは寝付けなくて目を覚ます。窓を開けてバルコニーに出た。

「はあ……」

 昼間、彼に出会った事で再び彼への気持ちが強くなった。

 バルコニーの手すりに手をついて、遠いようで近いような目の前の山を見つめる。

 この旅館は山に面しているため、バルコニーの下は崖っぽくなっているのだ。そのせいか、涼しい。

「ったく。なんでこんなとこにいるかな」

 星空に独り言。すると、

「それはこっちのセリフだ」
「えっ!?」

 ミカはギョッとして辺りを見回す。

「下だ。下」