「これは?」

「私の携帯番号。今あるのは、彼らに取られてしまったからね。私の手から24時間離れた場合、その携帯は自動で無効になる」

 依頼以外の内容はかけてこないように。マリは念を押された。

「そういうんじゃ、ないのに……」

 マリは、しょんぼりした。

「そういえばボスは?」

「そこら辺に隠れてるよ。外には出られないんじゃないかな。自衛隊が来るし」

 ベリルは言って、部屋の外を示す。他にもまだ捕まえてない組織員がいるのに、彼はそれに対処しようとしない。

 日本人の人間性を、よく理解しているのだろうか。気配がするとそちらを睨み付ける。それだけで、十分だった。

「足音がする。来たか」
「え」

 マリの耳には、まったく聞こえない。去ろうとするベリルに彼女は小さく声を上げた。

「待って……」

 引き留めても無駄なのに……どうしても引き留めてしまう。