そして、夜10時過ぎ。


「終わったー!」

隆志は椅子に座りながら思いっきり両腕を上にあげ伸びをした。



「あとは、必要部数コピーするだけですね。」

「あぁ。花音ありがとう。」



隆志は会社なのに私を下の名前で呼んだ。

ちょっとびっくりして私は辺りを見回す。



「もう、誰もいないよ。」

「本当だ・・・。」

「コピーは明日で十分間に合う。もう帰るか。」

「はい。」



私は更衣室へ向う。

そして、着替えて更衣室から出ると、ドアの近くで私を待っている隆志がいた。



「行くぞ!」

「うっ、うん。」



全ての電気を消すと、非常灯だけが明かりをともす。

誰もいない会社ってちょっと不気味。



「ちょっと怖いね。」

「そうか?」



そう言うと、隆志は私の手を握ってくれた。