僕等の怪談(1)

「自分を見つけて欲しかった?」
男は女生徒の霊の肩に手を掛けようとした。
けれどたった今まで抱き締める事の出来た身体に、今は触れる事が出来なくなっていた。
「沢田?」
男は母親を見失った幼子のように、頼りない顔をしていた。
「せん、せ、ごめんな、さい、」
先生が犯人の筈ないのに疑われて、学校も辞めてしまった。
先生は私を助けられなかったと、ずっと自分を責めていたから、私はあの男が憎かった。
私を殺して先生まで苦しめた男が憎い。
でも私はここから動けなくて、あの男がどんな姿をしていたかも忘れてしまった。
憎しみだけが大きくなって、自分を抑えられなくなっていた。
関係ない人まで傷つけていたのね。
でも・・・また、先生に会えた。
先生に会って謝る事が出来たから、私はもう眠れる。
「沢田、待ってくれ。お前を殺した犯人が見つからないんだ。」
男の慟哭は身を引き裂かれるような哀しみに充ちていた。
「あそ、こ、」
影の薄くなった女生徒の霊が、自分が埋まっていると言った赤紫の紫陽花を指差した。
「えっ?」
男が赤紫の紫陽花を振り返っている内に、女生徒の霊の姿が消えていた。
まるで最初からそこには存在していない幻のように・・・
「沢田?沢田、何処だ?沢田ぁっ」
男は身体の力を失くして、その場に両手をつき頭を埋めて動かなくなった。