「遠藤、今日あの女生徒を助けに行く気があるなら、バケモノなんて言うなよ。」
淳はいつもより強い口調だった。
「だってあんな姿を見て女の子なんて思えるのかよ。」
遠藤は今にも、お前だってそう思ってる癖にって言いたそうだった。
「どうしてあんな姿になったんだろうな。あの教師に襲われて逃げたのか、突き落とされたのか・・・」
淳の声はいつも通りの静かなトーンに戻っていた。
「これから助けようっていう相手をバケモノだと思っていたら助けられないよ。それに花子さんが傷つく。」
僕と遠藤は改めて淳の顔を見た。
「俺達にとって花子さんは一人しかいない。それに友達だ。彼女も頭では分かってはいるんだけど、自信がないんだよ。」
淳は昨日のケンカの時に既に分かってた?
「そっか。そういう事か。」
遠藤にも何かが伝わったらしい。
「あいつバカだな。あいつとあんな・・・を俺達が同じに思ってるわけないのに。」
そっか、花子さんが怒った理由が何となく分かった。
でもそんなのあんまり情けないよ。
こんなに一諸にいて僕達の気持ちが分からないの?
遠藤は友達だから口ゲンカぐらいするって言ってるのに。
淳はこんなに花子さんの事を理解してるのに。
僕は臆病だけど淳と遠藤と同じくらい花子さんが好きなのに。
でも僕達もバカだ。
「花子さんのバカァ。」
僕は屋上で思い切り叫んだ。
遠くで昼休みの終わりを告げるチャイムが聞こえた。