「お前何しょって・・・」
遠藤の引きつった顔、淳は顔面蒼白。
それに何だ?
あんなに軽かった女生徒が、今は重石のようにズッシリと肩にのしかかってくる。
ゾクリと冷たい震えが背中を走る。
「あっ」
身体全身を後ろに引っ張られて、階段から落ちると思った。
「うわぁっ」
もうダメだと思った次の瞬間、僕は遠藤と淳にがっしりと抱えられていた。
遠藤と淳の身体が震えているのが分かる。
僕は息をのんで後ろを振り返る。
でも恐怖で目が開かない。
無意識にガタガタ鳴る歯を食いしばって、目を開ける。
顔が引きつり左目だけが薄すら開いた。
「ひぃぃっ」
僕は2人に強くしがみついた。
階段の途中に這いつくばる不気味な人らしきもの。
でもあれが人間であるわけがない。
べっとりと濡れた髪が顔や身体に絡み付いている。
四つん這いになり、ずるずると階段を上ってくる。
その度に身体の関節が人としては有り得ない方向に曲がっていく。
ぐじゅぐじゅ
ずるずる
嫌な音を引き連れて足元に近付いてくるモノ。

「消えろ。」
淳はいつもポケットに忍ばせている浄めの塩を手に取り頭の上に振りかざし投げ付けた。
「ギャー」
べっとりとした長い髪の間から赤黒い口が開いて悲鳴が聞こえた。
僕はこの世のものとは思えない声に耳を塞いで、その場で凍りついていた。
そんな僕を何か強い力がその場からさらっていった。
僕はただ夢中でしがみついて、ぎゅうっと目を閉じていた。
「おい、もう大丈夫だぞ。」
誰かの手がペチペチと僕の頬を軽く叩いた。
「あっあっ遠藤。淳は?あっあっ淳。2人とも無事。」
2人が校内まで抱えてきてくれたんだ。
僕は2人の顔を見て、そのまま気絶してしまった。