授業が終わって18時までいくらでも時間があるのに委員会や部活に出る気のない僕達は、近くのファーストフードで腹ごしらえをしていた。
「何で階段から突き落とされるのは6月なんだ?」
バーガーに噛り付きながら遠藤はう~んと唸っていた。
「例えば犯人が、6月を好きか嫌いか、もしかしたら紫陽花の好き嫌いとか?」
淳もせっせとポテトを口に運びながら頭に浮かんだ事を喋ってる。
「そんな好き嫌いが理由なの?」
「チューッゴホッゴボッ」
僕はシェークを一気飲みしてむせてしまった。
「実際好き嫌いなんて簡単な話しじゃないだろうけど、犯行が6月の紫陽花が咲くあの場所なんだから何か意味があるんだよ。」
淳は最後のポテトを口にいれてナプキンで塩の付いた指を拭った。
「もうすぐ18時だ。早めに行っとこうぜ。」
遠藤が先に席を立った。
店の外に出ると空は既に薄暗くなっていて、俺達は揃って走り出した。
時間は関係ないのかもしれない。
だって暗がりなら犯行が行い易いし、見つかりにくい。
紫陽花階段が目の前に見えてきた時、女の子の悲鳴が聞こえた。
「キャーッ」
薄暗い中、その悲鳴が近付いて転がり落ちてきた。
間に合わなかったと思った次の瞬間には、遠藤が階段の最段階まで上りきっていた。
「いたたっ」
階段から転げ落ちた女生徒はゆっくりと上体を起こして腕を摩っている。
「遠藤一人じゃ心配だから行くよ。その子が大丈夫そうなら後から来て。」
淳もあっという間に最段階に上っていった。