「おい、あんなに簡単に逃がしちゃっていいのか?」
遠藤から不満の声が漏れる。
「あっ、ごめん。」
僕はふいに意識が戻ったみたいに目をパチパチさせた。
「僕何で・・・」
「おいおい、しっかりしてくれよ。」
遠藤が呆れているのが分かる。
僕は何をやってるんだ。落ち武者の霊が消えたって、あの霊をそのまま逃がすなんて。
「まあ、いいんじゃない。落ち武者は消えて、きっとこれで体育館の怪我人も減るよ。」
淳はすっきりした笑顔で僕達を見た。
「だな。」
遠藤も満足そうに頷いた。
「ありがとう。」
僕は何だか嬉しくて涙がこぼれそうで、ごまかしたくて天井を仰いだ。
「うわぁっ、もう朝だよ。早く帰らないとお母さんに見つかっちゃう。」
僕は一人でワタワタ大騒ぎを始めた。
「えっ、お前また抜け出してきたの?」
二人同時の台詞にガツーンとやられた。
「どういう事?」
「いや、ただ友達のとこ泊まるって言ってきたから。」

「え?」
僕は淳の言葉にショックを受けながら、今度は遠藤の顔を見た。
「俺も。」
遠藤は悪びれた様子もなく頭を掻いている。
「そんなの酷いよ。もう帰る。」
僕は立ち上がって体育館のドアに向かった。
「わりぃ、わりぃ。」
「ごめん、ごめん。」
2人が僕を追ってくる。

ドアはちょっと・・・完全に壊れちゃったけど、まあ終わり良ければ全て良し。だよね。
あれ?
何か大切な事忘れてるような?
まっ、いいか。