「うわっ~」
先生の淡々とした声だけが聞こえていた教室に遠藤の叫び声が響いた。
「あっあっあっ」
遠藤は食べ物でも、のどに詰まったみたいに言葉を声に出せないでいた。
「遠藤君、居眠りでもしてたんですか?相変わらず余裕ですね。」
担任の山形先生のインテリぶった嫌味が飛び出た。
でも遠藤には本当の事なんて言えないんだ。
それは僕と淳の2人だけが知ってる。


昼休みの屋上。ここは僕達3人の指定席。
「お前、いい加減にしろよな。」
遠藤が誰もいない空中に向かって怒鳴っている。
皆には見えてないけど遠藤の怒鳴ってる先には花子さんが両耳を押さえて宙に浮いている。
「悪かったわよ。だってあなた達に頼まれてた事が分かったから早く教えたかったんじゃない。」
花子さんは複雑な表情を浮かべている。
多分授業中にいきなり遠藤の目の前にアップで飛び出した事は悪いと思ってるんだと思う。
でも実際、遠藤は授業中に寝てたじゃないかと言いたいんだろうな。
何故分かるかって?
だって1週間前も、まったく同じ事でケンカしてたから。
だから花子さんも口に出さないで表情だけで訴えてるわけだ。