それから、あの人の話しを始めたんだ。
「あの人はここの学校で働いている人だと思う。いつも学校にいるし、ここで仕事をしてるから。でも凄く傷ついていて、夜中誰もいない学校のトイレの鏡を順番に割って」
「待って、この学校で働いているっていったら生徒じゃなくて先生じゃないか。」
淳は驚いて花子さんの話しに割って入った。
「僕達がそれを止めるの?先生を?」
僕は頭を抱えてしまった。
「まあ先生だとして、その人はお前の何?」
幽霊?の花子さんをお前呼ばわりする小学生は遠藤だけだと思う。
「分からない。でもあの人がトイレの鏡を割る度に、あの人の心の悲鳴が聞こえてくるの。」
花子さんは何だかとても切なそうに見えた。
「あーじゃあ・・・」
そう言って遠藤は僕と淳に交互に目配せをした。
僕は黙ってうなずいた。
「やるしかないな。」
淳がにっと笑って言った。
「ありがとう。でも先生を相手にしてあんた達大丈夫?」
花子さんは少し申し訳なさそうに言った。
「お前が言うな。」
遠藤が花子さんのおでこにデコピンをした。
いや、しようと思ったけど、遠藤の中指は花子さんのおでこをすり抜けて宙をはねた。
「あっ」
遠藤は花子さんより傷ついた目をして、それから立ち上った。